キューバのSF作家、ジョシュの最新作。「ルナティック」31号に掲載する「介錯」訳了のお知らせをしたら、返事に添付していただいたもの。ファイル形式は”doc”で、A4に印刷して164ページの長編。最後に2016年4月13日と日付が書いてある。現在、あるコンテストに応募して、発表待ち。多分、受賞できると思うとメールに書いてありました。来年2017年出版予定だそうです。

 時は2029年。亜空間航法が開発され、人類は一気にその勢力範囲を広げたが、異星人(身体がカンガルーで頭部がフクロウ、身長4メートルの巨人族)と遭遇、戦争状態に入った。8年間に及んだ戦争は人類の勝利に終わったが、戦後、須佐之男=三島を崇拝する「楯の会」が日本に台頭、モホーク、ナドワなどのアメリカインディアンの部族で結成する「六民族」とともに、連合人類軍に宣戦を布告する。物語はキューバ軍の戦艦「エルピディオ・バルデス」の艦長アライン・バルボサが「楯の会」領域内で作戦行動中に、歴戦の勝武(かつたけし)少佐、通称「座頭市」と遭遇、手痛い敗北を喫した後、何度も戦いを挑む姿を描く。
 この戦中に行われた講演の採録、「エルピディオ・バルデス」内の様子を脚本化したもの、乗組員が故郷の親族に書いた検閲だらけの通信文など、多彩な形式の幕間がはさまれている。中でも異彩を放つのが、脳の一部を負傷して言語中枢をやられた楯の会の捕虜を、日本独特の顔文字「(;_;)>_< (p^_^)p」などを使って尋問する場面はなかなか面白い。また、座頭市が指揮をする戦艦「秋風」をはじめ、楯の会領内には「鳴門海峡」、「豊後水道」という名前がついた航路があったり、「大阪城」という要塞もある。「東京ローズ」戸栗郁子なんていう人物も登場する。
 日本人の中には楯の会に反発しているものもいて、戦艦「エルピディオ・バルデス」には野口という日本人が乗り組み、楯の会領内で使用されている日本語や文化、風習にについて解説したりする。女性乗組員も相当数いて、超感覚をもつ「エスパー」と呼ばれる超能力者は女性で、副艦長も女性である。艦長であるバルボサは恋人がいて結婚も考えていたのだが、この副艦長と女性同士で結婚してしまい、艦長は頭を悩ますという場面もあった。
 

「死者たちよ、一歩前進されんことを」
Que den un paso al frente los caídos(2016)


Yoss

inserted by FC2 system