スペインのスペースオペラの11巻目。収録作は第27話「地球を逃れて(Exilados de la tierra)」第28話「千年帝国(El Imperio Milenario)」の二話分。
ヘリウム核融合と化した太陽のため、地球・金星・火星の惑星連合軍はその三惑星の全住民をはるか昔に避難したことがある惑星レデンシオンと、全滅した人類の宿敵トルボッドの母星の二手に分かれて逃亡することになった。ここからは、主人公ミゲル・アンヘル・アスナールが向かったトルボッド母星での話になる。総提督ミゲル・アンヘルがこの星を発ってから、相対論的な時間のずれにより、ここではすでに四千年の年月が経っていた。
目的地まで五千万キロメートルまで近づいたところで観測すると、豊かな植生が見られ充分な酸素が確認されたが、大きな都市のようなものも見えた。事前調査のため、ミゲル・アンヘルと、パイロットのワントラス大佐がオメガにのって調査に出発した。
地表付近には、鉄道の線路が敷設してあり、そこを走るのは蒸気機関車だった。しかし、接近しすぎたオメガ戦闘機は、機関車に連結していた列車の対空砲火をあびて着陸せざるを得なくなった。続いて襲ってきた兵士の一人を捕らえると、その兵士は女性で、訛りのひどいトルボッド語を話した。彼らは空から襲ってくるものを「ヒルカ」と呼んで常に警戒している。ミゲルたちはその「ヒルカ」と勘違いされていた。オメガの応急修理が済み、上空から見えた都市に向かっているとき、移民船団本部から正体不明の宇宙船隊が惑星に向かっているのを探知したと通信が入った。その通信に気を取られている間、捕虜の女性兵士に拳銃型の固体光線銃をとられてしまった。光線銃は背中に背負ったバッテリーがなければ発射できないので脅威ではないが、抵抗できない振りをして言いなりになることにした。すると、彼女は自分はアマゾネスの女王ミルバナス2世だと名乗った。言うとおりに街の近くに着陸したところで、その銃は使えないことを打ち明けると、彼女は銃を持ったまま、外へ逃げ出してしまった。
あの銃は地球軍の重大な秘密兵器だ。なんとしても取り戻さなければならないと追いかけたところで、街から押し寄せた兵士にミゲルは逆に捕らえられた。固体光線銃を駆動させるバッテリーも奪われたとき、大音声でサイレンが鳴った。その混乱に乗じてなんとか捕虜状態は脱出したが、光線銃の奪還はできなかった。ミゲルとワントラスが山間部に潜むと、空から宇宙船が街を襲い始めた。ミゲルが恐れていたとおり、ミルバナス女王は奪った光線銃で応戦を始めた。そして、その光線が宇宙船の原子炉を貫き、核爆発を引き起こした。この時点でミゲルはオメガ戦闘機で介入し、のこりのヒルカ宇宙船団を追い払う。アマゾネスの都市は壊滅状態だった。ミルバナス女王を始め、数人が生き残っていたが、放射能被爆の治療をしなければならない。移民船団の旗艦まで帰れば治療ができるのだが、オメガの座席の関係で2人しか連れて帰れない。医師の派遣を約束して、ミルバナス女王と侍女一人はオメガで初めての宇宙へ飛び立った。
このシリーズ、相当科学力は進んでいるのだが、いまだにエネルギー源は原子力である。最大の破壊力を持つのも核爆弾だ。いままで放射能障害についての描写はほとんどなかったが、ここではじめてページの半分を費やして被爆の危険について解説している。
オメガにはヒルカの捕虜も連れてきていたので尋問すると、やはりヒルカというのはナウム人のことだった。このころのナウム人は脳移植手術を発達させ、齢を取ると若い身体に脳を移植して命を永らえることが一般化していた。そして、度重なるアマゾネスの街への襲撃はそのための身体を調達するためだった。しかも、その捕虜は今のナウム帝国は千年帝国と名乗っていて、皇帝は脳移植の技術により四千年もの間生き続けてきた、父親のミゲル・アンヘルの娘だという。一時期、父親と結婚していたナウム皇帝アンバーはひそかに子供を生んでいたのだ。この事実を知った父親のミゲル・アンヘルはナウム帝国へ行く決意をする。固体光線砲が開発されるする前に地球を発ったバレーラは、強大になった千年帝国に苦戦をしているに違いない。ミゲル・アンヘル親子は遠征隊を結成して三度、ナウム討伐に出発した。