スペインのスペースオペラの12巻目。収録作は第29話「故郷への帰還(Regreso a la patria)」第30話「死闘(Lucha a muerte)」の二話分。このシリーズは1953年から1958年にわたって書かれてきたが、ここで一旦、終了。これが第1期の最終話となる。

 前作でのミゲル・アンヘルとイレーネ・ポラリスとの結婚から50年あまり。 ミゲル・アンヘルはすでにこの世になく、長男のフィデルは48才になり、バレーラの総提督という要職の就任式を今から執り行うことになっていた。医療技術の飛躍的な進歩により、人類の寿命は大幅に伸び、48才といえどまだ青年のようである。惑星船バレーラは太陽系を奪ったサドラ人を殲滅すべく、二手に分かれて避難した惑星レデンシオンからの遠征隊と共に、太陽系に近づきつつあった。今日は、そのレデンシオン艦隊のソフィア・メディーナ総司令官をバレーラに招いて歓迎式典をすることになっていた。バレーラの総提督となったばかりのフィデルにとって初仕事であった。読者はすでに知っているが、この総司令官は地球から避難するとき、別れることになった父親の元恋人である。ところが、フィデルはそのことは知らなかった。フィデルはかんたいの到着を歓迎するが、メディーナ総司令官が携えてきたレデンシオン政府の声明書は、バレーラにメディーナ総司令官の配下に就くよう命令するものだった。バレーラ側では、軍備では大幅に劣るレデンシオン軍の配下に入ることには強硬な反対があったが、フィデルは命令に従い、遠征艦隊の一つ、惑星船マラカイボの指揮をすることになった。その補助として入ったのが、総司令官の娘、ソフィア・ウルビサバル。レデンシオンに避難するとき、ミゲル・アンヘルと別れたソフィア・メディーナは年の離れたウルビサバル提督と結婚、その間に生まれた娘だが、提督の死後その職を受け継ぎ、アスナール家へ恨みをいだくようになってきた。
 太陽系内へ入ると、サドラ人の猛攻を受け、レデンシオン遠征軍はマラカイボを始め、多くの艦隊を失った。死地を切り抜けたことで、ソフィア・ウルビサバルとフィデルは好意を抱くようになり、
ソフィアの母とフィデルの父の恋について、フィデルは初めてソフィアから知らされた。体勢を立て直した遠征軍は、天王星のサドラ人基地に奇襲をかけ、制圧に成功する。

  戦勝ムードにひたるバレーラは惑星レデンシオンに着いたばかりである。フィデル・アスナールとその家族を始め、バレーラの市民4500万人が観光のためレデンシオン入りをしたが、そのバレーラ人がすべて捕虜にされたとの知らせがはいった。しかも、バレーラの内部に輝く人工太陽の破壊ももくろんでいるという。留守を預かっていたフィデルの弟、ミゲル・アンヘルは事実関係を調査しようとしているところで、攻撃が実行されてしまった。レデンシオンの市民は大半が脳をロボットに移植した「永遠人」になっていて、同じような移植をしていたナウム人がバレーラ軍に殲滅させられたことを知った「永遠人」が自分達も攻撃を受けるかも知れないと先制攻撃をしたのだ。かくして、同族でありながら主義主張が違ってしまった人類同士の死闘が始まった。この知らせをもたらした、永遠人のことを快く思っていないレデンシオン人のヒルダ・クローバー姉弟の助けを借りて何とか戦闘には勝利するが、その戦闘中に囚われていたフィデルとその家族は処刑されてしまった。この戦闘で4500万人の捕虜をすべて取り戻し、レデンシオン政府からの独立を勝ち取ったバレーラは未知の空間へ旅立つのであった。

 さて、これで続き物としての物語はここで一旦幕を降ろし、その17年後の1975年、ジョージ・H・ホワイトは「遥かな宇宙(Universo remoto)」でアスナール・ファミリーの活躍を再開させる。



《アスナール・サーガ12》
故郷への帰還 Regreso a la patria 
(Silente,2002)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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