スペインのスペースオペラの15巻目。収録作は第35話「地球奪還(Conquistaremos la Tierra)」第36話「司令艦橋(Puente de mando)」の二話分。地球が征服されて脱出してきてから1万4000年後、人類は地球を奪還しようと、艦隊を組織して出発した。。

 アトロンでは地球奪還作戦が計画され、艦隊の準備が整いつつあった。艦隊の司令官に任命されたミゲル・アンヘル・アスナール提督には、冷凍睡眠から目覚めた時に看護してくれたサラ(バレーラの暴動で死去)との間にミゲル・アンヘルという同名の息子がいたが、バルトプール人の指導者の娘、ヤウナと再婚、フィデルという息子も生まれた。フィデルは母親の血を強く受け継ぎ精神感応能力が身についており、アトロンで僧侶の職に就いた。アスナール提督は妻のヤウナと二人の息子を遠征に連れて行くかどうかで迷っていた。ミゲルのほうは行きたいと思っていたが、フィデルは持ち前の平和主義の立場から反対していた。地球までは亜空間航行でも300年はかかり、アトロンまで戻ってくるには、数千年は過ぎていることになる。ヤウナははじめは反対していたが、結局は三人とも一緒に行くことになる。300年にわたる航行中は、バルトプール人がアトロンで時を越えるのに利用した冷凍睡眠よりはるかに安全なカレンドンの非実体化を利用する。

 第36話。300年にわたる航行中に、フィデルは時々実体化して、太陽系についたら医療の分野で貢献しようと医療の勉強をしていた。太陽系にはいると、サドラ人の攻撃を受けたが、当時の地球人が持っていなかった重力波を使うと敵は次々と敗退し、地球に迫ることができた。地球攻略中に地球上陸部隊からSOSが艦隊司令部に入る。直ちに、息子のミゲル・アンヘルを中心とした救出隊が向かうが、これは罠で一行は捕らえられてしまう。一方、サドラ人を捕虜にした艦隊司令部はサドラ人の秘密を探ろうと、精神感応力のあるフィデルに尋問を担当させるのだが、艦隊医療部はバルトプール人とのわだかまりがあって最初は反対していた。しかし、父親であるアスナール提督の口利きもあって、やっとのことで尋問がなされたといういきさつもあった。そこでわかったのは、サドラ人は精神力が非常に強く、すべての個体が集合意識に属しているということだった。サドラ人との交戦において、彼らは新兵器を出してきた。地球のミニチュア技術の進化形というべきで、地球のミニチュア技術は、たとえばミサイルをミニチュアにして運搬し、作動させるときには原寸に戻す必要があったが、今回サドラ人が使ったのは、ミニチュアのままでオリジナルと同じ威力を発揮できるという技術だった。次第に苦戦を強いられていく地球人艦隊だったが、そんな中に、救出隊のミゲル・アンヘルたちが救出された。しかし、家族と合流したときに、ミゲル・アンヘルが父親の提督に襲い掛かった。サドラ人に精神をのっとられていたのだ。フィデルは精神力闘争でかろうじて勝利したが、一緒に救助された隊員たちも乗っ取られている可能性があり、ミニチュア技術によって小型化したサドラ人が大量に侵入しているかも知れない。

《アスナール・サーガ15》
地球奪還 Conquistaremos la Tierra 
(Silente,2003)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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