スペインのスペースオペラの19巻目。収録作は第44話「100万年(Un millón de años)」第45話「ロボットの反乱(La rebelión de los robots)」の二話分。

 第44話。惑星船バレーラは環状惑星アトロンへの帰途についていた。しかし、相対性理論効果により、アトロンでは100万年の年月が過ぎていた。科学が進歩した世界になっているのか、人類が衰退して荒れた世界になっているのか全く想像がつかない。長距離望遠鏡で観測できるところまで来ると、アトロンがいくつもの断片に分解しているのが見られた。偵察艦<ピント>が接近すると、巨大な球形船があらわれ攻撃を受けたので、海底に沈んでひとまず隠れることにした。地上に向かった上陸艇も攻撃され非常着陸した乗組員がそこで見たのは、かつてこの世界を建造したバルトプール人を衰退させた後、アトロンを支配していた昆虫人間カマキリ族だった。身を隠すところを探していたミゲル・アンヘル一行は、ある洞窟の中で人間の姿を見つけた。彼らは穴居生活をするまでに衰退したバルトプール人の末裔だった。彼らが持っていたテレパシー能力で意思の疎通はできたので、彼らの集落(タポ"tapo")の長ブロハとも出会うことができた。長の話によると、球形船に乗っているのはグーロ(ghuro)と呼ばれる半透明の体を持つ種族だった。そこへ、巨大球形船からの核攻撃を受ける。直撃を受けなかったのは正確な位置がわからなかったからと思われるが、放射能灰が降ってくるのでここから移動しなくてなならない。バレーラからの救助艇が敵の探知を避けるため、ここから500km離れた海の底に待機しているのでそこまでいかなくてならない。しかも、バックと呼ばれる個人用飛行装置は探知されるのを避けるために使えないので、徒歩で行くしかない。タポの種族は独自で避難することを決めたが、一部はミゲル・アンヘル一行と行動を共にすることになった。苦難に満ちた強行軍の末、海岸に到着すると一行はカレンドンでバレーラに帰還した。昆虫型の小型ドローンに爆弾を搭載してグーロの基地を一つ破壊し、捕虜も捕まえることにも成功した。

第45話。バレーラではアトロンに総攻撃をかけて100万年前のようにアトロンを再征服しようとする勢力が台頭していた。軍幹部の一人、マクレーン提督が計略を使って、対グーロ戦で行方不明になったアスナール総提督の後を継いだ。バレーラ内では民衆の抗議デモが起こったが、マクレーンは強硬手段に出た。それにしても、アトロンに総攻撃をかけるには軍の規模が足りなかったが、マクレーンには策があった。アトロン世界の創設種族が作ったイスライール(14巻「死の天使」に登場)という女性型ロボットをカレンドンで大量生産し、最前線に投入した。人間と違って、訓練の必要がなく、太陽光からエネルギーを得るので食事や休息の必要がないため、戦況は有利に進んだ。負傷したロボットはカレンドンで分解し、新しく作るロボットの資源としていたが、ある軍人が分解される前のイスライールをレイプしようとした。そのロボットは襲った軍人を殺害し、逃亡した。その事件以来、前線に投入されたロボットがすべて戦闘を放棄して逃亡するようになった。マクレーンは逃亡兵としてロボットに攻撃をすると反撃をするようになり、指令室寸前まで追い詰められた。ミゲル・アンヘルはイスライールに対する攻撃をやめ、アトロンへの移住を容認することを提唱する。すると、イスライール側も提案を受け入れ反乱は終結した。
 この「ロボットの反乱」というタイトルはいわばネタバレであり、実際に反乱がおきるのは全体の3分の2を過ぎてからで、いつ反乱がおきるのかと思いながら読んでいた。カレンドンでは人間の転送はできても「意識のある」生物は製造できないことになっているが、意識のないロボットはいくらでも製造できる。ロボットは敵前逃亡の罪に問えるのか、イスライールを人間と同様に対応する必要があるのかということをテーマとしている。

《アスナール・サーガ19》
100万年(Un millón de años) 
(Silente,2003)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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