スペインのスペースオペラ《アスナール・サーガ》の二巻目である。本書には、第4話「黄禍軍団」、第5話「星間治安隊(Policía Sideral)」、第6話「灰色忌獣人トルボッド(La abominable bestia gris)」の三話が収録されている。表紙は一巻目と同様、文字だけが配されただけの地味なものなので、ここでは1950年代に出版されたオリジナル版の第4話の写真を載せた。
 第3話「電子頭脳」で放浪惑星に不時着し、脱出できなくなったアスナールたちは青色人類と出会い、建造中だった惑星船が完成するまで冷凍睡眠に入ることになった。惑星船とは、原語で"autoplaneta" 、自動車をautomobileというように、操縦できる惑星との意の造語。〈ローダン〉シリーズの球形船と同形で、直径400メートル。アスナール・サーガの第一作発表が1953年。ローダンは1961年だから、球形船の採用はこちらのほうが先ということになる。
 400年たった第4話では、軌道を一回りして、再び地球に接近したアスナールたちが完成した惑星船《閃光--Rayo》に乗って地球に帰還するところから始まる。世界は第四次大戦まで経験し、アジア帝国(日本は中国に併合され、後にアジア帝国に組み込まれる)、イベリア連盟、アフリカ連合、ヨーロッパ合衆国、北アメリカ合衆国に大別されていた。しかし、圧倒的な数で優位を占めるアジア帝国は、北アメリカやヨーロッパにたびたび攻撃を仕掛け、再び大戦が起こりそうな状況にあった。元祖国に手を貸して、アジア帝国の攻撃を退けたアスナールは、業を煮やしたアジア帝国の総攻撃に対して、皇帝タルカス・カーンの本拠、ヤクーツクに秘密兵器、地底ミサイルで攻撃し、壊滅に追い込んだ。
 アジア帝国の黄禍軍団を倒したアスナールは、すでに地球人類と協力して、トルボッド人を追い出した金星の青色人類とともに、新たに結成された「星間治安隊」の提督に就任した。金星から火星に移住したトルボッド人と和平を結ぼうとしたが、失敗。火星付近の小惑星で発見した「デドナ鋼」の鉱脈をめぐる星間戦争に突入する。「デドナ鋼」とは惑星船《閃光》とその搭載艇に使用されている強靭な金属で、これを利用すれば、地球でも強力な艦隊を建造することが期待された。しかし、トルボッド人の円盤も「デドナ鋼」と同様に頑丈な船体を備えていた!
 第6話では、冒頭で月がトルボッド人の攻撃を受ける。そのころの月は、テラフォーミングがなされ、大気を持つ大規模な植民地となっていた。そこへ、大気の成分全てが核反応を連鎖的に起こすミサイルを打ち込まれ、月は死の世界へと逆戻りした。地球本星も攻撃にさらされるようになったので、アスナールは火星の本拠に攻撃を仕掛け、休戦に持ち込もうと画策する。地底ミサイルを改良した「地底強襲艦」で火星の首都ネマニアを占領したが、地球に対する猛攻はやまなかった。最早、地球人類は滅亡寸前。人類再興の望みとともに、六千人の男女を乗せた惑星船《閃光》は果てしない宇宙放浪の旅に出るのであった……。
 この第6話は、アスナールが国連へ来るところからトルボッド人との宇宙戦までのダイジェストが語られるので、一話だけ訳すとすれば適しているのかもしれないが、話としては地上戦の戦闘描写が多いので、ちょっと陰惨になりそう。
 次回配本、第3巻は「帝国の征服」、「闇の王国」の二話収録。ここまでの主人公、ミゲル・アンヘル・アスナールの息子、フィデル・コントレーラス・アスナールが新たな主人公となる。ミゲルは第2話で、バーバラ・ワッツと結婚したが、黄禍軍団との戦争で死亡。第六話では、ローラ・コントレーラスという従軍記者と行動を共にし、放浪の旅にも一緒に出るのだが、どうやら、フィデルはこのローラとの子供らしい。

《アスナール・サーガ2》
黄禍軍団 La horda amarilla
(Silente,1999)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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