スペインのスペースオペラの21巻目。収録作は第48話「神々の帰還(El retorno de los dioses)」第49話「その後の地球(La tierra después)」の二話分。

 第48話。アトロンに接近してくるトルボッドの球形船はバレーラの3倍の直径があった。交渉を試みるが、トルボッド側の主張はアトロンを放棄するか、抵抗して皆殺しになるかと譲らなかった。一部の抵抗勢力を残し、アスナールたちは球形船エルメスでアトロンから退避し、トルボッドの侵攻を警告するため地球を目指すことになった。亜空間を抜けて地球に着いてみると、そこには時を遥かにさかのぼった「ムー大陸」の時代だった。トゥアンコが大陸の階段のあるピラミッド状の神殿の近くに降りた。頂上にある神殿に入ってみると、そこには果物などの食物や毛皮などの供物が黄金のテーブルの上に並び、裸の女性が「マルドゥック神よ、お待ちしておりました」と告げた。この場面が今回の表紙イラストになっている。神官が空から星が落ちてきて国が亡ぶ時が迫っているという預言を受けていた時期だったため、神が降臨したと思い込んだのだが、アスナールたちが神であることを否定すると、急に攻撃的になり敵対するようになった。軌道上のエルメスに連絡を取ると、はたして接近中の小惑星が観測された。衝突コースに乗っており、もうあまり時間がない。ムーの人民を救済しようとカレンドンを地上に降ろすアスナールたち。国王が現れ、神官側につく人々と二分される。しかし、国王は自分の財宝や奴隷をすべて連れてカレンドンに入ろうとするが拒否されたので、去ってゆく。それでも6,480人ほどの民をカレンドンに収容できた。小惑星が衝突し、大量の水蒸気が発生したため大雨となり、ムー大陸が水没するのを上空から見守るエルメス。荒れ狂う海の中におおきな木造の船が漂っているのが見えた。さながら「ノアの箱舟」のようだった。

第49話は非武装の球形船が太陽系に入る前に亜空間宇宙から通常空間へ実体化するところから始まる。(48話ではムー大陸時代の地球での冒険の話だったのだが、49話では、どういう訳か、この話はなかったことになっているらしく、過去の地球についての言及はまったくない。)冥王星の軌道付近でエルメスは奇襲を受けて制御不能に陥った後に、バレーラから通信を受ける。「地球艦隊は貴艦を攻撃しようとしている。警戒されたし!」地球に接近する前に地球艦隊に包囲されたが、バレーラの言うような攻撃の意思はないようだった。もともとの目的がトルボッドの脅威を知らせるためだったので、地球艦隊の要請に応じて、アスナール提督は巡洋艦ヨコハマに乗艦する。そこでの話によると、バレーラが地球に着いたのは50年前。「カレンドン」や「ロボット・イズライール」など超文明の産物が供給されたが、地球の人々は生きるための労働から一気に解放されたため、かえって生活が荒廃した。地球政府による民衆への締め付けが始まった。巡洋艦ヨコハマで地球に着いたアスナール提督たちは軍によって拘束された。エルメスもサンフランシスコ沖に停泊させられた。「アスナール一族」を嫌悪していた一派が軍の中にいたのである。トゥアンコ・アスナールのテレポートやテレパシーなどタポ族としての能力を駆使して脱走を果たした時、バレーラが地球軍への攻撃を開始した。アスナール提督たちを収容したバレーラはトルボッドから奪還すべくアトロンに進路を向けた。

《アスナール・サーガ21》
神々の帰還(El retorno de los dioses) 
(Silente,2003)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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