スペインのスペースオペラの22巻目。収録作は第50話「アトロンの残留者(Los Últimos de Atlón)」第51話「惑星船の闘い(Guerra de Autoplanetas)」の二話分。

 第50話。トルボッドのアトロン侵攻が開始された。しかし、アトロンは広大なので、残留を決めたフィデル・アスナールの曾孫、このアトロンで生まれた8歳になるマレック・アスナールが暮らす岩をくりぬいた洞窟にはトルボッドの攻撃はなく、比較的平和な暮らしをしていた。だが、ついにマレックが暮らす村の近くにもトルボッドの侵略が迫ってきたので、異母兄弟が暮らすエレクトラに避難する。数年後、海底に造られた軍事基地でマレックも訓練を始めることになる。青年となったマレック・アスナールはタポ族としての能力とバレーラが残していった装備を駆使して、一進一退を繰り返しながらアトロンの密林を横断してトルボッドの前進キャンプを破壊。そして、その時傍受した通信でバレーラが帰還して接近していることを知る。マレックはこの時の指揮官だったミローバ大佐の娘、ボーラと結婚し、子供をもうけている。

第51話。バレーラとの戦闘でトルボッドはついに停戦交渉のテーブルに着いた。好戦的なのは軍の上層部だけで、兵の大半は自由を愛する民族だった。民衆の不満を抑えるために強力な専制政治がおこなわれていた。しかし、カレンドンの普及で民衆の意識は大きく変わっていた。アトロンは13の欠片に分解したものの、広大なアトロンに居住するのはタポ、人類、グーロ、トルボッド、マンティスの5種族になった。バレーラは再び地球に赴き、トルボッドからの解放に出発することになった。マレックはバレーラに搭乗して遠征したいという希望を持っていたが、妻と子はアトロンから動きたくなかった。そこで、マレックは一計を案じた。出発前のバレーラのカレンドンに自分のデータを登録しておき、70~80年後にバレーラが地球に着いたときに実体化すれば、アトロンにも残れるし、地球にも行ける。地球に着いたバレーラは地球軌道上に周回している直径550kmのトルボッドの球形船アルゴス(バレーラは直径3000km)を探知。バレーラにはテレパシーやテレポートができるタポ族が参戦していたが、テレパシーで心を読まれることを嫌ったバレーラ兵により差別を受けていた。しかし、トルボッド軍との圧倒的な戦力差により、テレポート能力を駆使したカンガルー作戦が立案されるとタポ兵は納得がいかないままに訓練に入った。フィデル・アスナールは幽体離脱能力を使いアルゴスの内部を敵に知られずに偵察するなど作戦の準備は着々と進んでいたが、トルボッド軍との直接開戦はなかなか始まらなかった。バレーラ議会でもこのまま戦闘が始まらなかったら、このまま撤退することに決まりそうになった時、トルボッド軍の攻撃が始まった。一進一退を繰り返す激戦の末、カンガルー作戦が成功し、トルボッドとの停戦に持ち込んだ。トルボッド内の穏健派と和解し、アルゴスは土星軌道上で自爆処理されることになった。



《アスナール・サーガ22》
アトロンの残留者(Los Últimos de Atlón) (Silente,2003)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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