スペインのスペースオペラの4巻目。収録作は第九話「地球奪還(Salida hacia la Tierra)」第10話「世界の破壊者、来襲(Venimos a destruir el mundo)」第11話「ロボット戦争(Guerra de autómatas)」の三話分。
 第9話の舞台は、トルボッドに占領された木星の衛星ガニメデのデドナ鉱山が発端。ここで強制労働についている地球人の額には、トルボッドの文字で焼印がされていた。アメリカ人のハロルド・デビッドソンが18人の仲間と収容所を脱走したところへ、宇宙服を着た女性が空から落ちてきた。額に焼印がないので、トルボッド側についた裏切者の地球人かと思い拘束したが、話を聞くと、彼女は二千年前に地球から脱出して植民星を見つけ、そこで科学技術を発展させて地球を奪還するために戻ってきた、伝説のアスナールの子孫、アマリア・アスナールだということがわかる。惑星レデンシオンに入植した人達は、地球の月ほどもある惑星船《バレーラ》を建造し、三十数年かけて地球に戻ってきたのだ!
 第10話で語られるのは、新たなる敵の登場である。地球は取り戻したものの、いまだトルボッドの支配下にあるガニメデを解放するため、戦艦《ベラクルス》を始めとする艦隊が進軍の途上にあった。しかし、謎の艦隊と遭遇し、戦闘状態となり、《ベラクルス》は大破した。搭載艇で脱出したベルナベ・ポカテーラ艦長以下19名は、ガニメデに不時着。地球に知らせる必要を感じた艦長は、搭載艇の生命維持能力を伸ばすため半数をガニメデに残し、半数を地球に送り出すことにした。ガニメデに上陸してしばらくすると、一人の女性遭難者と出会う。トルボッド語しか話せないこの女性はアイオワと名乗ったが、その正体はトルボッドを追って宇宙の彼方からやってきた惑星ナウムの軍人だった。その昔、トルボッド星の近くにあったナウム星はトルボッドに侵略され、絶滅の危機に瀕した。作戦行動中で難を逃れたナウム艦隊は直ちに報復、トルボッド星をも放射能で死の惑星に変えた。命からがら脱出したトルボッドが見つけた新たな植民先が、地球のある太陽系だった。生き残ったナウム人たちは近くの氷の惑星で軍事力を増強、驚異的な艦隊を組み、トルボッド殲滅に執念を燃やし、後を追って太陽系にあらわれた。ナウム人は復讐にとりつかれているため、太陽系もろとも破壊しようとしていた。攻撃を止めようと、ポカテーラ艦長はナウム艦隊指令とかけ合うが、交渉決裂。隙を見て地球に帰還した艦長の報を受けた地球は、ナウムとの開戦を決意した。弱体化したトルボッドは今まで支配下にあった全ての星を明け渡し、火星にのみ居住することで地球側と和解。ナウムとの戦争に備えを始めた。
 第11話は開戦準備であわただしいマドリードの街で始まる。ファビオラ・サンティステバンは遠い親戚であることがわかったレデンシオン軍のディエゴ・サンティステバンと逢っていた。召集命令が下り、ディエゴは艦に戻ろうとしていたとき、地平線の彼方に不気味な光が見えた。ナウムの攻撃が始まったのだ。やっと避難民収容艦となった《アルゼンチン》に乗り込み離陸すると同時に、マドリード中心部に水爆ミサイルが命中した。無尽蔵とも思える大量の人工知能ミサイルのために苦戦し、ついにはナウムのロボット部隊の上陸を許すまでに至ったが、地球側はクモ型地上ロボットを展開、ナウム軍を撤退させることができた。ナウム撃退は何とか実現できたが、地球は既に放射能に侵され、居住できる状態ではなくなっていた。惑星船《バレーラ》は十億の地球人を乗せ、再びレデンシオンへと戻ることになった。
 今回からアスナール家以外の人物が各話の主人公を勤めているが、次回からまたアスナールの子孫が出てくるようである。

《アスナール・サーガ4》
地球奪還 Salida hacia la Tierra
(Silente,2001)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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