スペインのスペースオペラの5巻目。収録作は第12話「レデンシオン応答せず(Redensión no contesta)」第13話「不幸な支配(Mando siniestro)」第十四話「エックス部隊(División Equis)」の三話分。
 第12話は、地球をめぐる戦いにかろうじて勝利した人類だったが、放射能に汚染された地球を捨て、再び惑星レデンシオンに30年かけて戻ってからの話となる。惑星船バレーラの主観では往復で60年だが、レデンシオンでは14世紀近く経っていた。さぞ文明も進んでいるだろうと期待していたのだが、レデンシオンに接近しても応答がまったくない。不審に思い、着陸船を送ってみると、そこは荒地になっていた。どうやら、珪素人類の逆襲を受け、崩壊したようだ。地下に潜入してみると、果たしてそこには暗闇の王国が復活していた。人類のテクノロジーも吸収され、以前より強力な種族となっていた。未開状態にまで後退し囚われていた人類も発見したが、救出に向かったフェルナンド・バルマー一行は、逆に珪素人類に捕まってしまった。
 第13話「不幸な支配」はそのすぐ後の話だ。珪素人類からは逃げ出したものの、依然として数百万の人口を抱えるバレーラとしては危機的な状況にある。レデンシオンの外を回っている惑星表面がほとんど海の惑星ソリマに活路を見出すしかない。調査してみると、この惑星も内部に空洞があるようだ。偶然見つけたトンネルを抜けるとそこには地球の古代ローマのような都市が広がっていた。ここの住民は空中都市に住むアーコンという神を恐れていた。アーコン神に仕える王家一族はレデンシオン由来のテクノロジーを使っていたので、自然史学者のアドルフォ・カスティーヨ一行は王家と接触してみると、やはり、アーコンはテクノロジーを利用して、神として君臨していることがわかった。偽りの神であると王家の一族を説得するうちに、事態を知ったアーコンは彼らを捕獲する。しかし、アーコン神の正体は、ソリマに脱出してきた提督ホサファト・アスナールで、外科医アルトゥーロ・セゴビアにより、脳移植を施され、次々と若い肉体に移し変えられて、今まで生きながらえてきたのだった。ホサファトの狂気に疑問を抱いたアルトゥーロのおかげで、アドルフォたちは惑星の外側を初めて見る王の一家と脱出することができた。
 第14話は、バレーラがレデンシオンに帰還してから5年後、あわただしい工場の描写で始まる。いらだたしい調子で怒鳴っているのはオクタビオ・フェレール。レデンシオン奪回のため、地底の紫外線太陽を通常の光線に変えるミサイルを開発した若き科学者だが、期限が迫っているので、髪やひげはボサボサ、服も何日も替えてないので、悪臭を放ち始めていた。助手のマルーハ・ゴヨアガも当然彼に対して良い印象を持つはずもなく、1500基のミサイルを完成させて一気に英雄となったが、マスコミ嫌いのフェレールを困らせようと、別荘に引きこもっているところへ押しかける。しかし、そこにいたのはさっぱりとした好青年。仕事が終わってみると、性格も悪くなかった。レデンシオン奪回軍は既存の通路ではなく、地殻に新しく穴をまっすぐに掘り、そこからミサイルを撃ち込み計画を立てた。その作戦に従事するのが「X部隊」だ。フェレールとゴヨアガも部隊に組み入れられ、作戦が始まったが、珪素人類の抵抗は熾烈を極めた。
  今までの主人公は勇気があり、へこたれない人物だったが、今回のフェレールはなんとも情けない。作戦中、何度も自信を失っては取り乱し、一度は助手のゴヨアガと恋に落ちるが途中で愛想をつかされたりする。しかし、最後には作戦は成功し、二人は結婚するのだが。
  次回、第6巻は、「ナウムの侵略(Invasión Naumita)」「暗闇の海(Mar tenebroso)」の二話収録。「ナウムの侵略」サイクル1という副題がついている。


《アスナール・サーガ5》
レデンシオン応答せず
Redensión no contesta
(Silente,2001)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

inserted by FC2 system