スペインのスペースオペラの八巻目。収録作は第19話「バレーラ暴動」(Motín en Valera), 第20話「植物人間の謎」(El enigma de los hombres planta)の二話分。
 居住可能な惑星を探して旅をするバレーラは、遠い昔にナウム人と戦って絶滅したトルボッドの母星だった星を発見した。しかし、バレーラ内では、実権を握り、主要なポストを独占していたアスナール一族に対する反乱が、バーマー一族によって企てられようとしていた。ミゲルの妹と結婚したホセ・ルイス・バーマーも反乱軍に加わっていたのである。
 ついに、バーマー一族は行動を起こした。アスナール一族に退陣を求めるだけでなく、今は、未開の星と成り果てたトルボッドの母星に追放しようとしていた。ミゲルは同胞同士で戦うのを避けようと、自ら進んで船を降りようとしたが、ナウム人の妻のアンバーはミゲルの行動は理解できないと腹を立て、護衛数名を連れてナウムへ還ってしまった。一方、強硬な手段に出た夫のホセ・ルイスを嫌って、ミゲルの妹のエストレーリャは娘を連れてアスナール家へ来ていた。子どものことを想ったミゲルは夫のところへ戻れと諭すが、妹は拒否をする。いよいよ追放という時に、ホセ・ルイスは説得に再度あらわれ、娘だけは連れて行こうとするが、ミゲルの母のメルセデスが孫を連れて先に惑星へ降りてしまった。二十万人のアスナール一族を残してバレーラが去ったその夜、ホセ・ルイスはひとりで家族の前に姿を見せ、ここに残る決意を語るのだった。
 探検隊を組織して、ジャングルに分け入ったミゲルたちは、原住民と見られる女戦士達の襲撃を受け囚われの身となるが、彼女らが話していたのは、スペイン語だった! その昔、トルボッドが地球から連れてきた捕虜の生き残りらしい。ちょうどそのときに病気になっていた族長のアマティフを治療したことで、ミゲルたちは解放された。
 しかし、その夜、月が消えるという現象が起きた。原住民の間では大騒ぎだったが、ミゲルたちは、月と見えたのはトルボッドの球形船であると結論付けた。ちょうどその時、アスナール一族がコロニーを建設したあたりに大きな爆発が起きた。空には「円盤」が飛んでいるのが見えた。トルボッドの攻撃を受けたのだ! 山の中腹に散在する洞窟の中を焼き払うために着陸した円盤をちょうど目撃したので、ミゲルたちは急襲して円盤を乗っ取ることに成功した。高速移動の手段を得たアスナール一行は次々と鉄鉱石の鉱床を見つけて製鉄を始め、道具や武器の制作に取りかかったが、その途中、突然に全長5mの樹木に枝の手足がついた植物人間に襲われた。銃弾などの武器は全く役に立たない。火炎放射器でやっとのことで撃退したが、倒した樹木人を調べてみると、頭部にアンテナのような物がついている。トルボッドに操作されていると結論付けたカスティーヨ教授に従い、どこかにあるトルボッドの基地を捜索して攻撃をしかけることにした。そうすれば、地球に帰還することもできるだろう。同時に、分捕った円盤でトルボッドの生き残りのことを警告するために、ナウム星にまた戻ることも決定した。遠くに見える火山にトルボッドの基地があると見たミゲルは遠征団を組織して出発したが、それはあまりにも過酷な道程だった。
 今回の主人公、ミゲル・アンヘル・アスナールは息が長い。いままでは、一話完結で主人公が変わっていたが、さすがに、始祖と同じ名前だけある。初代のミゲルは六話連続で主人公だった。今度のミゲルはそれ以上はいけそうである。まだ続くミゲル・アンヘル・アスナールの話は次回「人類の災厄」「反乱軍の巨人」「獣人の降伏」の三作。

《アスナール・サーガ8》
バレーラ暴動 Motín en Valera 
(Silente,2002)
ジョージ・H・ホワイト George H. White

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