スペイン語SF翻訳作品(Obras de ciencia ficción de lengua castellana traducida al japonés)
訳者名のないものはすべて中嶋康年訳です
(Las obras sin nombre de traductor son traducidas por Nakazima Yasutoshi)

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「地上で最後の夜」 La última noche en la tierra 「SFファンジン」67号
(2023)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
Fabricantes de sueños 2007
ヘスス・フェルナンデス・ロサーノ Jesús Fernandez Lozano
1974年スペイン・コルドバに生まれ、20年以上前から妖精物語を書いている。2004年まで幻想的なインスピレーションによるファンジン{夜(ナハト)&霧(ネベル)」を編集。出版社「美しきワルシャワ」と協力し、「アンドレス・マルバソの小さいが勇敢な詩の本」を出版。2006年、個人出版で「大胆不敵な詩集」を刊行。
 電子雑誌「コンセプト(Rescepto)」に掲載された本編「地上で最後の夜」がスペインF&SF&T協会(AEFCFT)が出版している「夢の紡ぎ手2007年版(Fabricantes de sueños 2007)に収録された。詩の同人誌「優しき男の兵士」編集。出版社「イスラ・バリア」の詩集「わたしたちに何をした?」と出版社「美しきワルシャワ」の詩集「サイス」に収録。2010年グラナダに転居し、詩のサークル「歩行者のための詩」に「アンドレス・マルバソの一発芸」で参加した。2011年詩人ベロニカ・モレーノとポエム・フェスティバル「猫に小判」を開催。2013年4月「美しきワルシャワ」から詩集「人類のすべての言葉」を出版。2013年10月。10年間にわたって書いてきた短編をまとめ、妖精物語集「空気と水の王」を出版社「カプシア」から出版。
イグノトゥス賞の5部門にノミネートされた。

「抱擁したいほどの駆動」 Abrazar el movimiento 「SFファンジン」66号
(2022)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
Abrazar el movimiento
クリスティーナ・フラード Cristina Jurado
 1972年マドリード生まれ。作家、編集者。本作は2021年イグノトゥス賞短編部門受賞。イグノトゥス賞では2016年に「スペインSF 短編集」という記事でアーティクル部門、2017年、2018年、2019年には編集長を務める「スーパーソニック」で雑誌部門を3年連続で受賞、2017年「父の2回目の死」で短編部門、2019年「バイオナウタ(Bionauta)」で女性作家最初の長編部門、2020年にはローラ・ロブレスと共著の「潜入者(Infiltrados)」でエッセイ部門で受賞と、毎年何かで受賞していた。なお、本作は英語訳版が公開されていたので先に入手していたのだが、本人に掲載許可を求める際にスペイン語版はどこで買えるかと問い合わせたところ、PDFを無償で送っていただいた。


「紙の宇宙」 Universo de papel 「SFファンジン」65号
(2021)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書

直送原稿
セルヒオ・ガウト・ベル・ハルトマン Sergio Gaut vel Hartman
62号の「輪は閉じる」と一緒に送っていただいたファイルの中に入っていた一篇。アインシュタインがフロイト博士と書簡を交わしていた時のアインシュタインの秘書エマの不思議な能力の話。


「拡張現実」 Realidad aumentada 「SFファンジン」64号
(2020)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
Fbricantes de sueños02010-2011
モイセス・カベージョ・アレマン Moisés Cabello Alemán
 1981年スペイン・テネリフェ生まれ。「夢の紡ぎ手2010-2011(Fabiricantes de sueños)」収録。クリエイティブ・コモンズで「多元宇宙(Multiverso)」三部作を発表。資金はぶろぐやユーチューブで書評などをしている


「期限切れの少女」 La niña caducada 「SFファンジン」63号
(2019)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
リプリー賞のホームページから入手。現在は消去されている。
ベアトリス・エステバン Beatriz Esteban
 1997年生。2018年スペイン女性作家SFコンテスト第2回「リプリー賞」を本作で受賞。現在、大学で心理学を専攻。最新作は刑務所でのボランティア経験を生かした「囚われ(Presas)」(2019)


「タビ:不確実の国」
短編集「多分来ない旅行者のために」より
Tabi:el país de lo inestable
en la antrlogía "Para viajeros improbables"
「SFファンジン」63号
(2019)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine

原書
Para viajeros improbables(2012)
Kindle

セシリア・エウダーベ Cecilia Eudave
1968年メキシコ・グアダラハラ生まれ。作家、グアダラハラ大学教授。長編「モンスターな人生(Bestiaria Vida)」(2008)でフアン・ガルシア・ポンセ中編小説賞(Premio Nacional de Novela Crta <Juan García Ponce>)受賞。「SFファンジン」)には55号(2011)以来2度目の登場。2010年、韓国語翻訳出版の際、ついでに来日。グアダラハラ大学に留学していた教え子の日本人女性とともに東京を案内。だいの「鉄腕アトム」ファンで、秋葉原でアトムのぶりきのおもちゃを購入した。最新作は極短編集「小さな崩壊(Microcolapsos)」

「輪は閉じる」 El círculo se cierra 「SFファンジン」62号
(2018)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
直送原稿
セルヒオ・ガウト・ベル・ハルトマン Sergio Gaut vel Hartman
  セルヒオ・ガウト・ベル・ハルトマンはアルゼンチンの作家、編集者。1947年生。アルゼンチン初のファンジン「シネルヒア(Sinergia)を1983年に創刊。Facebookでは以前から交流があり、本稿は著者から直接送っていただいたもののうちの1篇。死者による復讐という一見古典的なテーマのホラーとも見えるが、かつて軍事政権下で多数の市民が「行方不明」になったアルゼンチンの現代史を背景とする社会性の強い作品でもある。


「介錯-KAISHAKU-」 Kaishaku 「ルナティック」31号
(2016)
東海SFの会
LUNATIC 31
原書
AXXON 142
ジョシュ Yoss
  ジョシュは1969年、キューバの首都ハバナ生まれのSF作家。この短編はアルゼンチンのウェブマガジンAXXON(http://axxon.com.ar)142号(2004)に掲載された。本誌には、平成20年(2008)26-A号以来二度目の登場である。昨年(2015)は東宣出版から初の邦訳短編集「バイクとユニコーン」(La moto y el unicornio)が出て、一部でちょっとした話題になった。
 本編には「嘉手川宏樹」という日本人が登場するが、原文はHiyaki Kategawa。「ヒヤキ」では日本人らしくないので、作者承認のうえ、「宏樹」としたが、ヒヤキ氏は父が日本人、母がキューバ人の彼の友人の一人で日本では普通の名前だと思っていたとのこと。また、Jonshiroという人物も出てくるが、スペイン語ではJは「ハ行」の発音となるので、これも作者承認のうえ、「本司郎」と表記することにした。
 切腹の場面では、原文では「突き刺して、まず上に切り上げる。そして、下、右、左と切り裂いた」となっていたが、時代劇でわれわれが見るような「横に切ってから、縦に切り十文字とする」方法に書き直すことを認めていただいた。訳者としては、でしゃばり過ぎただろうか。。


「HANSHICHI Un detective en el Japón de los samuráis」 半七捕物帳 (Quaterni 2012)
原書

半七捕物帳
Okamoto Kidô
Mariló Rodríguez del Alisal
Yuko Fujimura 訳
岡本綺堂

traducido por
マリロ・ロドリゲス・デル・アリサル、
フジムラ・ユウコ
 今回は異例で、日本語からのスペイン語訳でSFでもないのだが、岡本綺堂「半七捕物帳」のスペイン語訳版を紹介する。
 発行当時、そこそこ話題になったらしく、スペインのどこかのサイトで紹介記事を見たことがある。調べてみると、続編として、2014年に「半七の新しい冒険」(Las nuevas aventuras de HANSHICHI)が出ている。「発音の注意」として、名前は日本風に苗字・名前の順に表記してあること、「将軍」などの伸ばす音はshôgunのように山形記号をつけた文字を使用していること、Hは発音すること、j、sh、zは英語風に読むこと、ge、giはゲ、ギと読むことなど約1ページを費やしての注釈も載っている。
 また、初めて日本の時代物に接する西欧人に対しては当然のことながら、こと細かな日本の風習、言葉の解説などの脚注をほとんど毎ページにつけているのも、ご苦労がしのばれる。
 岡本綺堂という名前は知っていても、「半七捕物帳」は読んだことがなかった。見返しの解説によると、綺堂の父は下級武士だったが、明治維新後に英国公使館に就職、息子に若いころから英語を学ばせた。のちに新聞記者として演劇評論などを書きながら歌舞伎作家になることを夢見ていたが、ついに念願の歌舞伎作家になり、成功を遂げる。しかし、彼の名が最も知られるようになったのは、ある日偶然に手にしたシャーロック・ホームズを原語で読み、感動して書き始めたこのシリーズだった。
 収録作は、「お文の魂」「石灯籠」「勘平の死」「半鐘の怪」「奥女中」「春の雪解け」「朝顔屋敷」「猫騒動」山祝いの夜」「鷹のゆくえ」の10作。


「宙(そら)の地図」 El mapa del cielo ハヤカワ文庫NV
(早川書房 2012)
原書
El mapa del cielo
PLAZA & JANES、2012
フェリクス・J・パルマ
宮﨑真紀 訳
Félix J. Palma
traducido por
Miyazaki Maki
「地図」シリーズの第2巻。話としては、完結していた「時の地図」のまさかの続巻である。今回は「宇宙戦争」をモチーフにH・G・ウェルズが大活躍する。エドガー・アラン・ポーも特別出演。前作「時の地図」では逃したイグノトゥス賞国内長編部門は、本作では見事に受賞。2014年版の「SFが読みたい!」(早川書房)では海外篇第6位にランクイン。続編の3巻目「El mapa del caos」は10月にスペインで出版される予定。


「三人の女」 Tres mujeres 「ルナティック」30号
(2013)
東海SFの会
LUNATIC 30
原書
Fabricantes de sueños 2009
エルナン・ドミンゲス・ニモ Hernán Domínguez Nimo
 1969年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。本職は広告代理店でディレクターを務める。アルゼンチンのWEBマガジン「AXXON」、スペインの「ネクロノミコン」「2001」「アルティフェックス」等に寄稿。2003年、チリのファンジン「FOBOS」のSFコンテストに「Moneda común(共通貨幣)」で入賞。
 ここに訳出した「三人の女」はアルゼンチンの「CUASAR」に掲載された後、スペインのAEFCFT(スペインF&SF&T協会)発行の「夢の紡ぎ手」2009年度版に再録された。スペインのSFサイト「BEM on LINE」のインタビューによると、13のときに父を亡くしているので、テーマとして「死」を取り上げることが多いという。この作品は、街の為政者を毒殺して独裁者となった警察署のトップが、その為政者の復活におびえる物語だが、ここでも、「死」が大きくかかわってくる。城塞都市の中世的雰囲気を持ちながら、高いテクノロジーを持つ世界を舞台にしたスタイリッシュSFである。


「頂上」 El ascenso 「SFファンジン」55号
(2011)
全日本中高年SFターミナル
SF fanzine
原書
Los viajeros
-25años de ciencia ficción mexicana-
セシリア・エウダーベ Cecilia Eudave
この「SFファンジン」はBAMU、イスカーチェリ、科学魔界の40周年を記念して発行された合同ファンジン。表紙は「SFマガジン」創刊号などのイラストの中島靖侃画伯の未発表作。夢枕獏、めるへんめーかー、リチャード・コールダー(増田まもる訳)の各氏の特別寄稿、門倉純一、難波弘之、関口芳昭、波津博明、三浦祐嗣、菊池誠、巽孝之、小谷真理、立花真奈美の特別座談会など、およそ「ファンジン」とは思えぬできあがり。
この短編は原書の「Los viajeros」が出る前に著者(グアダラハラ大学の文学部教授)から送ってもらったもの。この作者の作風はファンタジックな作品が多いが、これほどストレートなSFは珍しい。人類が死に絶えた世界で、厳寒の中、先祖が埋葬されている山に登るアロンソと幼なじみのアンドロイド、オットー。苦しい登山の果てに彼らの見つけたものとは…。


「転移の日」 El día que hicimos la transición 「ルナティック」29号
(2011)
東海SFの会
LUNATIC 29
原書
AXXON103
(1999)
ペドロ・ホルヘ・ロメロ &
リカルド・デ・ラ・カサ
Pedro Jorge Romero & Ricard de la Casa
スペインのアマチュア・ライターであるペドロ・ホルヘ・ロメロとリカルド・デ・ラ・カサ(ルナティック18号に「地球帰還プロジェクト」掲載)はホアン・マネル・オルティスと共に1990年からSFファンジン「BEM」を発行、現在はBEM ON LINE(http://www.bemonline.com/portal/)でSFポータルサイトを運営中。
 この短編は1997年、スペインSF&F協会の年刊SFアンソロジー「ビシオネス(Visiones)97」に収録。99年にはアルゼンチンの「AXXON103」、スペインの時間SF短編集「時間風景(Cronopaisaje)」、アメリカのラテンアメリカ・スペインSF短編集「コスモス・ラティーナス(Cosomos Latinas)」、デヴィッド・ハートウェルとキャスリン・クレイマーの「年間SF傑作選(Year's Best 9)」そして、2007年ジェイムズ・モロウ「ヨーロッパ名誉の殿堂(SFWA European Hall of Fame. Sixteen Contemporary Masterpieces of Science Fiction from the Continent)」にも収録された。
なお、作中に登場する元スペイン共産党書記長サンティアゴ・カリーリョは実在の人物で、現在91才、まだ存命中。


「セバスティアン・ミンゴランセの七つの人生(のようなもの)」 Las siete vidas (o así) de Sebastián Mingorance SFマガジン4月号
No.661 (2011)
早川書房
SFMagazine Abril 2011
原書
El menor espectáculo del mundo
(Páginas de espuma,2010)
フェリクス・J・パルマ
井上知 訳
Félix J. Palma
traducido por Inoue Tomo
「時の地図」が2011年度版「SFが読みたい!」海外篇3位入賞を受けての「SFマガジン」誌上で短編の紹介である。独り者の冴えない男が、右へ行くか、左へ行くか、というところから<優柔不断>1号、<大胆不敵>2号・・・と次々と増殖していき多種多様な1日を体験するという、妄想といえばそれまでだが、シュレーディンガーという名前も出てくるので、平行宇宙SFとしても読めるという1篇。


「時の地図」 El mapa de tiempo ハヤカワ文庫NV
(早川書房 2010)
原書
El mapa del tiempo
Alianza Editorial 2008
lフェリクス・J・パルマ
宮﨑真紀 訳
Félix J.Palma
traducido por Miyazaki Maki
「SFが読みたい!」2011年版にて海外篇第3位という快挙!スペイン本国でも、受賞は逃したもののイグノトゥス賞にノミネートされた。H・G・ウェルズ(主人公にも負けない大活躍ぶりが楽しい)や切り裂きジャックなどを織り交ぜ、だましだまされの時間旅行の話である。日本での出版以来、各方面で賞賛の声が多数寄せられた。日本版は上下2分冊だが、原書はペーパーバック版で670ページもの分厚い大冊。もっとも、2分冊になっているのは日本版だけらしいが。この続編、「宇宙戦争」をモチーフに使った「宙の地図(El mapa del cielo)」が2011年秋に刊行が予定されている。


「シュレディンガーの猫についての真実」 La verdad sobre el gato de Schrödinger ルナティック28号(2010)
東海SFの会
原典
BEM on Line(2009)
フアン・カルロス・プラネルス Juan Carlos Planells
  1950年、バルセロナ生まれ。評論家、作家。スペインSF 界では最古参の部類に入るベテラン。短編を得意とする作家で、長編は「El Enfrentamiento(対決)」と「El corazón de Atenea(惑星アテネの心)」の2編。Planells fact & fiction (http://spaces.msn.com/pfjcplanells3/)というブログで、映画、小説に関する評論や短編を発表している。
 この短編は、BEM on Line (http://www.bemonline.com/)に掲載されたもので、2009年に同サイトで発表された短編のアンケートでは、締め切り直前まで1位だったが、最後にドミンゴ・サントスの「El hombre de arena (砂の男)」に一票差で敗れ、2位になってしまった。このアベルとマリサのコンビは2008年の「Teoría de los mundos paraleros (平行世界の理論)」にも登場している。

「アンブロトス」 Ambrotos ルナティック26-A号(2008)東海SFの会
原典
Fabricantes de sueños Selección 2006 (AEFCFT 2006)
ヨス Yoss
 一年間に発表された短編のなかから毎年変わる編集のチームがセレクトする年次傑作選「夢の紡ぎ手(Fabricantes desueños)」2006年度版(発表されたのは2005年)からの一篇。今年度版は「テルビ(TerBi, Tertulia de Bilbao)」というスペイン北部の都市、ビルバオ地区のSFファンクラブのセレクション。前年度版まであった、著者と作品についての解説がなくなり、表紙イラストもあまりセンスがいいとは思えないなど、ちょっと手を抜いたかと思われるが、作品自体は読み応えのある作品を13作ならべている。
 作者はYoss という変わったペンネームのキューバ人で、本名、ホセ・ミゲル・サンチェス(José AmbrotosMiguel Sánchez )、1969年ハバナ生まれ。15才で文学ワークショップに参加してから、作家活動を始める。長髪でいかにも芸術家風の風貌だが、作風はいたってオーソドックスで、SFらしいSFになっている。ダビデ賞(キューバの文学賞)をはじめ、数々の受賞経験がある。スペイン、中南米はもちろん、イタリア、フランスなどでも翻訳され、幅広い読者を獲得している。代表作に「ティムシェル(Timshel)」「惑星貨します(Se alquila un planeta)」「ライオンの羽根(Pluma de león)」など。

 昨年に引き続き、イラストも自分で作ってみた。実際に掲載されたイラストは細部がつぶれて、ほとんど何が書いてあるのかわからないので、ここに再録する。(クリックで拡大)


「身体の記憶」 La memoria del cuerpo ルナティック26号(2007)東海SFの会
原典
Fabricantes de sueños Selección 2005 (AEFCFT 2005)
ビクトル・M・アンチェル Victor M Ánchel
 一年間に発表された短編のなかから評論家のチームがセレクトする年次傑作選「夢の紡ぎ手(Fabricantes de suenos)」2005年度版(発表されたのは04年)からの一篇。ビクトル・M・アンチェルは30才で、2才の女の子の父親。職業はスペイン国立オーケストラでオーボエとイングリッシュ・ホーンを演奏するプロの演奏家。若いころから小説を書いていたが、2000年、AXXON(アルゼンチンのウェブファンジン)のコンテストにコンテストに応募すると、ファンタジー・ホラー部門のベストに選ばれた。その後、AXXONやPULSAR(これもウェブファンジン)に投稿を続け、03年、初めて書いたSF「リサイクラー(Reciclador)」でドミンゴ・サントス賞の最終候補に残った。そして、06年、セネカ(Seneca)のペンネームで「スペインの血によるジプシーの情熱(Pasion gitana por sangre espanola)」でドミンゴ・サントス賞受賞を果たす。ここに訳載した作品は、アルティフェックス第2期12号に掲載されたもの。
 よくありがちな朝の情景が、少しづつおかしくなり、だんだんと崩れ落ちていくさまはサイコサスペンスの手法だが、ところどころにSF風ガジェットがちりばめられていたり、現代の風刺もあちこちに顔を出すなど、ジャンルミックスを試みた一篇として、面白い作品になっている。

「世界を壊す」 Deshacer el mundo
ルナティック25号(2006)東海SFの会 原典
Fabricantes de sueños Selección 2004 (AEFCFT 2004)
ホアキン・レブエルタ Joaquín Revuelta
一年間に発表された短編のなかから八篇を選んだ年次傑作選「夢の紡ぎ手(Fabricantes de sueños)」2004年度版からの一篇。作者のホアキン・レブエルタは、1965年カディス生まれ。広告代理店でのグラフィックデザイナーを経て、情報処理の仕事のかたわら、英語の教師をしている。92年に書いた「血と涙とアリシア(Sangre, lagrimas y Alicia)」でドミンゴ・サントス賞に応募して見事受賞。それからコンスタントに書き続けており、99年には「ナイアガラを見られたなら(Si pudieras ver el Niagara)」でUPC(カタルーニャ工科大)特別賞、2003年にはアシモフ・シエンシアフィクシオン誌に「中心の龍(Dragones en el centro)」が掲載され、「ユダの裏切り(La traicion de Judas)」はアルベルト・マグノ賞受賞。ここに訳出した「世界を壊す」は2002年ドミンゴ・サントス受賞作で、2004年の「アルティフェックス第2期」10号に掲載された。
 日本に来たことはないが、日本文化には非常に興味を持っており、日本語も勉強中。今まで書いた作品は、サイバーパンク風の作品が多く、名前や舞台に日本のものをよく取り入れる。作中に登場する「ノリコ」という名前も、旅行中に実際に出会った女性の名前を使ったという。

「秘密」 El secreto
SFマガジン6月号No614(2007)早川書房
SF Magazine Junio 2007
原典
Visiones Periféricas
(Lumen 2001)
ロベルト・ロペス・モレーノ
井上知 訳
Roberto López Moreno
traducido por Inoue Tomo
「SFマガジン」-異色作家特集2-に収録されたメキシコ・チアパス州出身の詩人の作品。マヤ文明を研究するドイツの学者がメキシコ・シティでマヤに関する資料を読んでいると、マヤの古代人があらわれ語る驚愕の真実!幻想文学の形をとっているが、その中で語られることはまぎれもなく「バカSF」である。


「折紙」 Origami
ルナティック24号(2005)東海SFの会 原典
Gigamesh No33 (Gigamesh 2002)
サンティアゴ・エクシメノ Santiago Eximeno
作者のサンティアゴ・エクシメノは、1973年マドリード生まれの若い作家だが、今発行されている雑誌やファンジンにはほとんど作品を発表している多作の作家である。「Qliphoth(クリフォト)」という神話についてのファンジンをPDFファイルにてインターネット上で展開中。(http://qliphoth.eximeno.com
本作はヒガメッシュ33号に発表され、2003年イグノトゥス賞(日本の星雲賞に相当)受賞。年間傑作選「夢の紡ぎ手2002-2003」に収録されるなど多くの評価を得ている。

「眼科医」 El oculista
ルナティック23号(2004)東海SFの会 原典
Registro de imposibles (Conacultura 2000)
セシリア・エウダーベ Cecilia Eudave
著者は私が開いている「日本SF」のページを見てメールをくれた人のうちの一人で、メキシコ・グアダラハラ大学の文学部の講師。メキシコ文学のウェブサイトliteratura.comにて、幻想文学についてのコラムを担当している。
 ここに訳出した「眼科医」は彼女から送っていただいた「Registro de inposibles(あり得ざることがらの記録)」に収録された最初の一篇。ほかに、手のひらに口ができてフランス語をしゃべり始めるという「Con la boca en la mano(手に口が)」や、スナ城の城主ヒロシが、ある夜、吸血鬼に命を救われた。その礼として彼を街に招き入れなくてはならなくなったが、町民が犠牲になるのを見かねた城主ヒロシが困っていると、高僧ニワが夢に現れ、彼に退治法を伝授した。それは吸血鬼の身体中に”kyuuketsuki”と刺青をすることだった、と言う話を含む3篇で構成されたオムニバス短篇「Tatuajes(刺青)」など全10篇。

「ある王朝の最期、もしくはフェレットの博物誌」 El fin de una dinastía o Historia natural de los burones SFマガジン10月号No570(2003)早川書房
SF Magazine Octubre 2003
原書
Kalpa imperial (Gigamesh 2000)
アンヘリカ・ゴロディッシャー
井上知 訳
Angelica Gorodischer
traducido por Inoue Tomo
アルゼンチン生まれの女流作家アンヘリカ・ゴロディッシャーの代表的連作短篇集「帝国の永劫(Kalpa imperial)」からの1篇。アルゼンチン一国にとどまらず、スペイン語圏全体のSF・ファンタジー界においても最重要作家の一人。アルゼンチンでの初版は1983年。

「腹の中の野獣(愛の物語)」 La animal en tu estómago
(Una historia de amor)
ルナティック22号(1999)東海SFの会 原典
Visiones 1996 (AEFCF 1996)
ホセ・ルイス・レンドゥエレス José Luis Rendueles
ホセ・ルイス・レンドゥエレスはスペイン北部アストゥリア地方の若いファンで、「Parcifal」というファンジンを発行している。いつも詩を書いていて、賞も取ったことがあるというが、短篇はあまり書いてないらしい。この短篇は{Visiones 1996」というAEFCF(スペインF&SF協会)が1994年から発行しているアンソロジーに収録された。毎年、編者が交代し、この年の編者はJoan Manel Ortiz。スペインのファンジン「BEM」の編集者の一人である。

「暗黒物質」 Materia oscura ルナティック21号(1997)東海SFの会 原典
BEM #36 (1994)
セーサル・マジョルキ César Mallorquí
この作品はスペインSF大会「イスパコン93」にて発表されたドミンゴ・サントス賞の第1席を受賞、「BEM」36(1994)に掲載された。インタビューでは、「この短篇はボルヘスの「ブローディーの報告書」にインスパイアされた」と語っている。

「地球帰還プロジェクト」 De nuevo en casa ルナティック18・危難の海号(1993)   東海SFの会 原典
直送原稿
リカルド・デ・ラ・カサ Ricard de la Casa
スペインとフランスの国境が走るピレネー山脈の中にある小さな国「アンドーラ」。リカルドはこの国の住人である。スペインのSFファングループ「グルーポ・インテルファセ」の一員で、ファンジン「BEM」を発行。


「芽」 Retoñs ルナティック17号(1992)東海SFの会 原典
Retoños (Minotauro 1986)
ルイサ・アシュペ Luisa Axpe
1945年、ブエノスアイレス生まれ。彼女は心理学者であり、コピーライターである。いままでに、いろいろな雑誌から短篇を発表している。


「最前線」 Primera Línea ルナティック16号(1991)東海SFの会 原典
Latinoamérica Fantástica (Ultramar 1985)
カルロス・ガルディーニ Carlos Gardini
1948年、ブエノスアイレス生まれ。職業、翻訳家。著書に「軽業(Juegos Malabares)」1984、短編集「私の動物的な脳(Mi cerebro animal)」1983、「交響曲ゼロ(Sinfonía cero)」1984を発表。ここに訳出した短篇は第1回アルゼンチン短篇読者サークル賞を受賞。


「ヘロニモとの散歩」 Un paseo con Gerónimo ルナティック14・15号(1989・1990)東海SFの会 初出
Cuasar #6 (1985)
ダニエル・バルビエリ Daniel Barbieri
1951年5月30日ブエノスアイレスに生まれる。本業、弁護士。ダニエル・バルビエリは筆名で、本名、ダニエル・クロシ(Daniel Croci)。SF雑誌「ヌエボムンド」の編集長であり、アルゼンチンSF協会(CACyF)の創立メンバー。本編は1985年に著者からぜひ日本語に訳してくれと預かっていたもので、ほかに英語とフランス語に訳されているそうである。以下は著者自身による「ヘロニモとの散歩」についての覚書。
「アルゼンチンの軍事政権の間(1976~1983)何千人もの人たちが”消えた”。つまり、家族、友達、知人たちが彼らの姿を見なくなったのである。しかし政府は、彼らは死んでもいないし拘留されてもいないという。ところが、そのような(巨大な宣伝機構によって大きく支えられている)公式情報は、”事実の歪曲"が行われていると論じている人もいる。人々は特に1976年から1980年の間は恐怖におののいて生きてきた。私はいとこが政治的な本を2冊持っていたために、2週間”消えて”いたことを思い出す。その本は何年も前に亡くなった叔父のものだと証明できたため、彼を救うことができた。その罪深い本は1940年代の日付がついていたのだ。同じ頃、友達や知人が何人か消えたが、彼らが現れたとは聞いていない。
 公式な事実と現実の事実の矛盾を見た私は1978年から1979年の頃、死んでもいなければ、拘留されてもいない、しかし、彼を知っている人とか、知ってもらいたい人には感知できない人間とはどんなものだろうと想像してみた。それが原案、あるいは基本的なアイデアである。このような原案は恐怖を覆い隠すので、この小説はその恐怖の底への旅という形を取った。とはいえ、ほのめかしてある程度で、はっきりと出してはいない。このような考えは、ウィリアム・ブレイクの悪魔的な思考や、ボッス、ブリューゲル、ゴヤの地獄絵に通じていると思えた。私は故意にプロットを調和的発展を排除しながら組み立てた。逆に、混乱を増し、苦痛を表現するために、前述の画家たちがその絵に用いたある種のデフォルメの手法で規則を乱してある」
 2004年1月19日、心臓発作のため死去。

「グ・タ・グタラック」 Gu ta gutarrak イスカーチェリ 29号(1988)イスカーチェリSFクラブ 原典
Lo mejor de la ciencia ficción española (Martínez Roca 1982)
マグダレナ・モウハン・オターニョ Magdalena Moujan Otaño
 本篇はフランコ時代のスペインで発行差し押さえを受けたいわくつきの短篇である。というのも、バスク問題を取り扱っているからだ。バスクはスペイン北東部に位置し、今も急進派ETAのテロをはじめとして、激しい独立運動を続けている一地方のことである。この地方に住むバスク人は、インド・ヨーロッパ語族の侵入以前からイベリア半島に住んでいた古い民族で、そのバスク人が話すバスク語はヨーロッパに残る唯一の前・印欧語的言語で、「能格」という独特な文法を有している。バスク民族の由来は諸説あるが、本当のところは謎らしい。
 その由来をテーマにしたのが本篇なのだが、差し押さえられるほどの政治色は見られない。あったとしても、スペイン政府のあるマドリード中心のカスティージャ地方や、バスクより穏便だが、やはり独立運動を展開している北西部のガリシア地方、バルセロナを中心とする南西部のカタルーニャ地方の人を「外国人」扱いするくらいである。しかし、バスク語はもちろん、スペイン語(カスティージャ語)に近いカタルーニャ語やガリシア語まで使用を禁じたフランコ政権にとって、題名からバスク語になっている本編には相当カチンときたらしい。
 著者のマグダレナ・モウハン・オターニョはアルゼンチン人で、ラプラタ・カトリック大学の数学部長を務めているが、彼女自身がバスクの血を引いているかどうかはさだかでない。また、本篇は1968年の第2回アルゼンチンSF大会で大賞を受賞した。なお、本篇中のバスク語は下宮忠雄著「バスク語入門」(大修館書店)を参考に、1968年バスク語アカデミーを中心に制定され、印刷物などに普及しつつあるという「統一バスク語」の発音に基づいて表記した。

「暗闇」 La oscuridad イスカーチェリ 29号(1988)イスカーチェリSFクラブ 原典
Lo mejor de la ciencia ficción latinoamericana (Martínez Roca 1982)
アンドレ・カルネイロ André Carneiro
 イスカーチェリ初のブラジルSFである。著者カルネイロは60年代初めにデビューし、ブラジルSF第一の黄金時代に属するブラジルSF界の代表者。ポルトガル語で書かれたSF論としては今も古典的評価の高い「Introdução ao estudio da <Science Fiction>(SF研究入門)」(1968)の著者でもある。本編は1963年に出た彼の短篇集「Diario da nave perdida(失われた船の日誌)に収められたが、1972年にはハリスンとオールディスが編集した「ベストSF’72」に、そして1982年にはベルナール・ゴールデンとヴァン・ヴォクトが編集した「Lo mejor de la ciencia ficción latinoamericana(ラテンアメリカSF傑作集)」に収録されるなど、高い評価を得ている。また、アメリカではレオ・バロウの手により脚本化され、映画にもなり(1969)、これがかなり当たったという。
 カルネイロは自分の短篇集としては前記の「失われた船の日誌」のほか、「O homen que advinhava(予言した男)」(1967)があり、ブラジル人作家のSF短篇集「Historia do acontecera-1(将来その一物語)」(1961)、「Alem do tempo e do espaço(時空を越えて)」(1965)にも短篇が収められている。またちょうへんも一篇「Piscina livre(自由なプール)」が1975年に出版されている。 翻訳テキストとしては前記「ラテンアメリカSF傑作集」を使用しましたが、「暗闇」はドミンゴ・サントスによるスペイン語訳からの重訳であることをお断りしておきます。


「キャラメル」 Caramel ルナティック13号(1988)東海SFの会 原典
Cuerpos descartables (Minoaturo 1985)
セルヒオ・ガウト・ベル・ハルトマン Sergio Gaut vel Hartman
セルヒオ・ガウト・ベル・ハルトマンは1947年、ブエノスアイレス生まれの現代アルゼンチンSF界の最前線に立つ作家、編集者である。編集者としては「パーセク」「シネルヒア」を手掛け、特に「シネルヒア」では、ファンジンで初めて商業雑誌に格上げされたのだが、ファンジン時代にはアルゼンチンのSF賞「マス・アジャ賞」のファンジン部門を常に受賞し、プロ雑誌になったら今度は雑誌部門でも受賞してしまうという、評判の高い雑誌なのである。
 この「キャラメル」は、86年マス・アジャ賞の短編集部門を受賞した「使い捨ての体」(ミノタウロ叢書)に収録されている一編である。88年3月号のSFマガジンに波津博明氏が「なんとも忘れがたい印象を残す」として、その筋を長々と紹介した。


「哀しみのモナリザ」 La Gioconda está triste ルナティック12号(1987)東海SFの会 原典
Lo mejor de la ciencia ficción española (Martínez Roca 1982)
ホセ・ルイス・ガルシ José Luis Garcí

「風に棲むもの」 Alguien mora en el viento イスカーチェリ 27号(1986)イスカーチェリSFクラブ 原典
Lo mejor de la ciencia ficción latinoamericana (Martínez Roca 1982)
ウーゴ・コレア Hugo Correa
 日本に始めて登場する南米SFです。日本ではこれまでラテンアメリカのSFというとガルシア・マルケスやボルヘスなどの幻想小説を持ち出すのが関の山でしたが、SFプロパーがどのくらいの水準に達しているか、この作品を一読しただけで納得してもらえると思います。
 作者のウーゴ・コレアは1926年うまれのチリ作家。1959年に発表された「風に棲むもの」はチリSFの黄金時代の幕開けとなった重要な作品です。コレアはその後、「至高の者たち」(1959)、「雨にさまよう者」(1961)、「ピラトの反逆」(1971)、「悪魔の目」(1972)など、幻想的なSF作品を発表、このうち、「雨にさまよう者」は映画化されています。チリSFの黄金時代は1973年、アジェンデ左翼政権が打倒され、右翼軍部独裁体制が成立するとともに幕を閉じます。コレアの活躍の時期とこの「黄金時代」はほぼ完全に重なっており、チリSFの生んだ代表的作家と考えていいでしょう。当時コレアとはりあったチリ作家としては、「超人」(1963)、「時のこちら側」(1968)、「不死」(1971)などのアントワーヌ・モンターニュがいます。「風に棲むもの」が発表された1959年と言えば、日本ではまだ「SFマガジン」の創刊前。現在活躍している作家のほとんどはデビューもしていませんでした。本編は、少なくとも当時の日本SFの水準からすれば、傑作と言ってもいいのではないかと思われます。
 もっとも、「セックスはタブー」という感覚の強かった当時のアメリカSFの影響もあるのかどうか、この作品には妙な家族制度神聖化の傾向が感じられます。30年近く前では仕方ないことでしょうか。
 コレアは現在、妻と5人の子供とサンチャゴに住み、政府の社会開発国家審議会で働いており、とくに反軍政の立場にはいないように見られます。


「探査隊」(コミック) Expedición ルナティック11号(1985)東海SFの会 原典
Kandama #3 (1981)
トニ・ガルセス Toni Garcés
これはスペインのファンジン「カンダマ」#3に掲載されたコミックです。この「カンダマ」が主な発表の場となっていますが、丸っこい岩がふわふわ浮いているような特徴のある画風です。


「タイタンの遭難者」 Naufragio en Titán ルナティック11号(1985)東海SFの会 原典
Lo mejor de la ciencia ficción española (Martínez Roca 1982)
ハビエル・レダル Javier Redal
ハビエル・レダルはバレンシアで生物学を教えていて、その合間にSFを書いている。ここで紹介したようなA.C.クラーク風のハードSFを好んで書くようだ。しかし、発表したのが早かったためか、現在わかっているデータと違っていることがあるが、それを別にしても充分に読める短篇となっている。


「アスファルト」 El asfalto ルナティック10号(1984)東海SFの会 原典
Lo mejor de la ciencia ficción española (Martínez Roca 1982)
カルロス・ブイサ Carlos Buiza
カルロス・ブイサは、スペインSF界の流星といわれている。この「アスファルト」でデビューし、一時はほとんどの新聞、雑誌、アンソロジーに名を馳せ、自分でも「クエンタ・アトラス(秒読み)」というファンジンを編集(1966年創刊)、「エル・アレフ叢書」も世に出したが、重い病気にかかってからぱったりと活動をやめた。
「アスファルト」はナルシソ・イバニェス・セラドールの手により、TVドラマになっている。もうひとつの代表作「光のない世界」もドラマ化されている。


「スデンバイモ」 Sudenvaimo ルナティック9号(1984)東海SFの会 原典
Nueva Dimensión #134 (1981)
イグナシオ・ロメオ Ignacio Romeo Perez


「時間がない」 No tengo tiempo ルナティック8号(1984)東海SFの会LT8 原典
Nueva Dimensión #126 (1980ND126LT8.jpg
ペドロ・L・ナバレーテ Pedro L Navarrete
スペインのファンダムでは創作熱がかなり高く、ヌエバ・ディメンイオン編集部には、読者が書いたSFが数多く送られてきているという。大部分はつまらないものだが、時々、質が高いものが混じってくることがある。こういう人たちに発表の場を与え、新人スペイン人作家の開拓をしようと、ヌエバ・ディメンシオンは121号から「プリメル・ブエロ(初飛行)」というコーナーを新設した。 毎号1篇づつ紹介していくのだが、新人とはいえなかなか粒がそろっており、へたをすると、常連作家の作品よりおもしろいものがある。ここに訳出した作品も、そういう傑作のうちのひとつである。この作者については、マドリードに住んでいるという他はなにもわからない。なお、この人はND#136に第2作「愛しのボブ}を載せている。NDの新人開拓作戦が功を奏したというべきだろう。

「都市にて」 En la ciudad イスカーチェリ 22号(1982)イスカーチェリSFクラブSKA22 原典
Nueva Dimensión #127 (1980)ND127
ドミンゴ・サントス Domingo Santos

「大変動」 El gran cambio イスカーチェリ 20号(1981)イスカーチェリSFクラブISKA20 原典
Nueva Dimensión #124 (1980ND124)
ビクトル・M・ホセ・ロメロ Victor M. José Romero


「我ら去りしとき」
過去を見る老人」
「指導者」
Cuando no estemos
El viejo que podía ver el pasado
El conductor
ルーナティック7号(1981)東海SFの会LT7 原典
Nueva Dimensión #121 (1980)ND121
ヘスス・ゴメス・ガルシア Jesús Gómez García
スペインの街角のキオスクで手に入れた、当時唯一のSF雑誌「ヌエバ・ディメンシオン」120号の最後のページに、黒い枠で囲って「ヘスス・ゴメス・ガルシア逝く」が報じられた。ちょうど出国の日に発売となった翌号、121号に掲載されたのがここに訳出した3篇の追悼特集だった。
 彼はスペインSF協会の長老的存在で、創作よりも翻訳をよくやり、「指輪物語」や「ザンジバルに立つ」などは彼が名訳をしているそうだ。

「冥界の書」 Liber Infernalis
イスカーチェリ 19号(1981)イスカーチェリSFクラブISKA19
原典
R.ロドリゲス・トジョス Roberto Rodriguez Toyos

「未来の物語」 Cuento futuro
イスカーチェリ 15号(1978)イスカーチェリSFクラブISKA15
原典 不明
クラリーン(レオポルド・アラス)
八巻明子 訳
Clarín (Leopordo Alas)
traducido por Yamaki Akiko


「海が死ぬとき」 La muerte del mar
イスカーチェリ 14号(1977)イスカーチェリSFクラブISKA14
原典 不明 
ホセ・マリア・ヒロネリャ
田川康弘 訳
José María Gironella
traducido por Tagawa Yasuhiro


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